「組織開発の探究」読書会 まとめ

先日、「組織開発の探究」オンライン読書会が終わりました。90分×6回、3か月でしたね。コロナで外出制限のかかっていた時期と勉強会が重なっていたので、いろんな意味で意味深いものでした。
 私たちの読書会のやり方は、前日に10ページ程度を担当を決めて、A41枚にまとめてクラウドにアップする。始まるとそれを見せながら5分でプレゼン、残り時間は対話です。
できるだけ対話の時間を長くするようにしたかったのです。
今回の最後は、本のあとがきを読んでから、「自分のあとがき」をまとめること。
2名の人は、本当のあとがきみたいに書いてくれました。コロナ禍での組織開発についてもことも書いてあるので、改訂版には載せてほしい(笑)。

全文を公開します。

「組織開発の探究」読者のあとがき。

おぎのさん

*組織とは何か?
2020年前半、この半年で世界は大きな変化を遂げてしまいました。ご存知の通り、新型コロナウィルスによるパンデミックという現象によって、私たちはその在り方や行動を変えざるなくなったためです。感染を防止するため、人はこれまでのように容易に対面であることができなくなりました。物理的に人が集まり組織を構成することも難しくなりました。大企業に象徴されるような都心のオフィスに出社し、人の集合として醸成していた部署、チームといった機能は成り立たなくなり、ZOOMの様なオンラインでの形式でのヴァーチャルな集まりへの変化をしていっています。形のみならず、組織で起こる課題もこれまでも体験したことがないものが表出しています。リモートワーク、在宅勤務において、ヴァーチャル上で行われるミーティングによって、従来通りのコミュニケーションが成り立たなくなり、意思疎通ができなくなったり、こうしたヴァーチャルによるメンバーのマネジメントに四苦八苦しているマネジャーが多く出てきています。一方、メンバーも、出社すれば、物理的に感じていたつながりやチーム感がなくなり、孤独感を感じたり、一人の状況で自律的にセルフマネジメントが難しくなり集中力や生産性が落ちていったり、それらに対してのストレスによって、うつ症状を発症している事例の報告が増えてきています。
しかし、そうした変化に対して、20代、30代の若手経営者が経営している組織は、新しい組織やチームの形を柔軟に創造し、オンラインツールのプラットフォームを駆使し、新たなコミュニケーション、マネジメントの形をいち早く実現しようとしています。そうした組織は、これまで一般的にイメージするヒエラルキー型の組織構造ではなく、フラットでいわゆるホラクラシー型の組織だったり、上下関係や役職のないプロジェクトチームだけで構成される様な組織形態も生まれてきています。また、企業ではあるものの共通の価値観を持つだけのコミュニティ的な組織も生まれてきています。これらはまさに外部環境の変化に柔軟に対応する有機体の様な組織です。
しかし、組織とは今一度何か?を考えた場合、組織=Organizationと捉えるのであれば、個々の機能、働きを持った器官=Organの集まりでもあるし、そもそもまさに有機的な=Organicな存在であり、現在立ち起こっている組織の変化というものは、本来あるべき組織=Organizationの在り方に近づいているとも言えないでしょうか?
また、これまで一企業としての国や社会のいち構成員であった様な組織は、GAFAに代表される様に、国家予算をしのぎ、国境を超え、国以上に重要なインフラや事業やサービスを生み出すまでになっています。
新型コロナウィルスにより、世界が大きな変化を迎え、かつて体験したことがない様な状況が待ち受けている未来において、「組織」という本書の年表に表現されている1900年代以降のこれまでの概念ももはや大きくその認識を変えなければならない状況になっていると考えます。
変化が激しく答えない世界、時代を進んでいく上で、その環境変化に柔軟に対応すべきその形態や定義を変えていくまさに有機体としての構成体のように新しい組織の概念を考えていかねばなりません。また、国を超えるような組織や地域や価値観を共にするだけのコミュニティとしての組織、既存のような事業を運営している組織など、あらゆる規模、形態、機能を包含した構成体も組織と呼ぶこともできるかもしれません。
そうすると、大きな意味での組織とは、個々の存在が構成する全体としての存在という言い方もできるかもしれません。

*開発とは何か?
では、組織の「開発」とは何か?本書では、組織における問題解決のアプローチとしての「組織開発」が紹介されてきました。では、上記の新しい組織概念での問題とは何か?と言えば、俯瞰して捉えると、それは、個々人同士の関係性の問題、そして、個と全体の関係性の問題に対する解決アプローチと言えるでしょう。
しかし、これはある意味人類誕生から抱えていた問題とも言えます。相手を支配し、強制される関係性や依存構造。2020年に立ち起こっている分断や支配、差別といった関係性に関する諸現象は、これまで人類が繰り返してきたことであり、そろそろその個々人同士の関係性や個と全体における関係性についても、新たな次元での解決が求められているのではないでしょうか?

*これからの組織開発の探究
全体を構成するのは、もちろん個人であり、個人のあり方と関係性、言い換えれば、個人の個性やエゴと全体との調和をどのように実現していくか、これまでよりも高い次元を真剣に考える時代になってきました。そのためにも組織の構成要素である個の成長、発達、進化をいかに組織において促していくか、いわゆる人格や人間力の向上をどのように全体としての組織で行なっていくのか。
新しい組織開発手法、それは、個々のエゴを乗り越え、これからの新しい人類、そして、その全体が、つながり、調和を図っていくための大局観を持ったものとなり、それを皆さんとこれからも「探究」していきたいと思います。

Anny

本書の中で組織開発は「風呂敷」「アンブレラ」というメタファーで表現されているように、組織やその主構成である人に関する様々な物事を大きく包み込むもので、その中には類似する哲学、ツール、考え方、メソッド、方法論、スキル、マインドセット、学問、教育、研究など、あらゆるものが包摂していると書かれています。
しかし、今までそのような雑多なものを飲み込んで来た組織開発という全体像と、組織開発という中に包摂されているそれぞれの哲学、ツール、メソッド、方法論、、、等々の関連性や繋がりを明確に示した文書に出遭うことが、私はできずにいました。
そして、本書が組織開発の全体像と、包摂されている様々なもの同士の関連や繋がりを、明確に、明快に私に示してくれた初めてで唯一のものとなりました。

私は、本書が書かれるきっかけとなった2017年1月に南山大学で開催されたイベントの企画、運営に携わっていましたが、当日、登壇された本書の執筆者の一人である中原淳先生の話を聞いた時の、衝撃と感動と興奮は今でも鮮明に記憶しています。
「あ。。。全てが繋がった。。。」
あまりの衝撃に居ても立っても居られず、中原先生の講演が終わるやいなや、ジョン・デューイの「経験と学習」購入し、既に絶版になっていたクルト・レビンの書籍を市内の図書館で探し求めてむさぼり読んだのでした。

今回の読書会で本書を読むのは3回目になりますが、3度目を読み終えた今、改めて思うのは、本書には実に沢山の組織開発の源流を辿るための糸口がちりばめられており、この糸口を辿ることで私たちはさらにより深く、より多くの組織開発を学び、探求することができるということが、改めて明確になりました。

本書の「おわりに」で中村和彦先生が書かれているように、組織開発の目的とは「実践すること」ではなく、「働く人々の幸せのためのもの」であり、組織開発とは組織で働く人々のために活かしてこそ価値あるものとなります。同様に、組織開発を実践する者の目的は、「実践者になること」ではなく、「働く人々が幸せに存在できる組織を共創すること」であるということであり、そのために常に自らに問い続け、自分自身のマインドセットとその態度、振る舞い、言動と向き合いながらチャレンジし、働く人々の幸せを共創することです。「実践者になっている」ということは、その結果に過ぎないのです。

年表を見てわかる通り、組織開発の世界では実に多くの心理学、社会心理学や人間行動学がその源流となって様々なメソッド、方法論、ツールを編み出して来ました。しかしながら、人的プロセスを取り扱い、そこへの関わりを通して、組織で働くひとり1人がより幸せにいる場所の共創を導出する組織開発実践者(本書では「チェンジエージェント」と書かれています)にとって何よりも大切なのは、単に組織開発のメソッド、方法論、ツールを知っていること、そしてそれを使って実験することではなく、人々の心や人の「生(なま)」に触れ、取り扱うことへの正しい怖れと覚悟を持って自らの倫理観と向き合い、養い続けることだと思います。

再び、組織開発に脚光が当たっている今、組織開発に隣接するする様々な分野から専門家やコンサルタントが参入し、群雄割拠の様相を呈しています。しかし、果たしてどれだけの方が組織開発の理念を探求し、その本質を理解しようと努め、正しい恐れと覚悟を持って自らの倫理観に自覚的になり、謙虚に人々のプロセスと向き合っていることでしょうか。

過去に日本で起こった組織開発の哀しい歴史を、二度と繰り返すことがないよう、私たち実践者は真摯に組織開発と向き合い、組織開発と共に自分自身を探求し続けていかなければならないし、そのことを伝え続けて行くことが大切なのだと、本書を読み終えて強く感じています。

組織開発は、研究者のためのものでも、専門家のためのものでも、コンサルタントのためのものでも、ましてや組織開発の実践者(チェンジエージェント)のためのものでもありません。
組織開発は、そこで働き、生きる人々のためのものであり、彼らが幸せに存在しているためのものであるという組織開発の真の理念と価値を、私たち実践者は決して忘れてはならないのだと思います。

いたる
かっきー
ともみ
ひろにい
ヤジマ