【開催しました】「世界標準の経営理論」読書会 第15章:組織の知識創造理論(SECIモデル)/第16章:認知心理学ベースの進化論

第15章はSECIモデルでした。
入山先生によると、「SECIモデル」は、一橋大学の野中郁二郎名誉教授が90年代前半に提示した「この世で唯一の知の創造プロセスを描き切った理論」だそうです。

まず、SECIモデルを理解する上で欠かせない概念が「形式知:言語化・記号化された知」と「暗黙知:言語・文章・記号などで表現が難しい、主観的・身体的な経験値」ですが、この暗黙知と暗黙知とがダイナミックにぶつかり合うプロセス(知の創造の動的プロセス)で融合し、新しい価値を創造するということを説いたのがSECIモデルです。
新しい価値とは、”全人格をかけた知の格闘(知のコンバット)”によって、「私」と「それ」、「私」と「あなた」が「私たち」へと一体化し、共感が生まれ、共同化が進むプロセスで創造されるものであり、逆に言えば、この「共感・共同化に到るまでの徹底的な知のコンバット」を経ずして、新たな価値は創造されないのだ、ということを説いています。

今、日本の組織のそこかしこで「イノベーション」がバズワードのようになってますが、人と人との「ガチ対話:知のコンバット」に目を背け、異なった価値観や考え方に正面から向き合うことなく避けて通っている限りは、「イノベーション」なんて創発されるわけもないんだな、と、強く感じ、どうすれば人がこの「ガチ対話」に正面から向き合い、挑む(知の創造の動的プロセスを実践する)ことができるのだろう。。。と、改めて考えさせられました。

”言うが易し、行うは難し”の脱却は本当に難しいっ!でも、逆に言ったら、ここから脱却し、挑むことを選択した組織は、新たな価値を創造しうる、ということに学術的な根拠があるということでもあるわけなのですが。。。
こんな素晴らしい理論が日本発であるのに、何で日本の組織ではこうも知のコンバットがなされないのはなぜなのか、という話題で盛り上がっておりました(#^.^#)
また、同質的な暗黙知同士の間で知のコンバットがなされたとしても、新たな発想は価値が創発されることがないのではないか、新たな価値の創造は、異なったもの同士の組み合わせで起こるものなので、「ルーティン化」によって同じような認知が暗黙知に埋め込まれた人同士では欲するConbinationが起こらないでないか、などという興味深い話もしてました。

16章は「ルーティン」に関する理論で、「ルーティン」が、ビジネスの「現場」の進化メカニズムを明快に描いていると説いています。
ルーティンの特徴は2つあって、ひとつは「繰り返される行動パターン」であること、もうひとつは「状況の変化によって変わることもある行動パターン」だそうです。

なぜ、組織が様々なことをルーティン化するのかと言えば、それは、組織が進化していくために新たな認知を広げて学習する「余裕」を生み出すためなのだそうです。組織は認知に限界があるので(カーネギー派経営理論の前提)、「得た知を留めっぱなし」にしておくとやがて組織の認知キャパシティがいっぱいになって、新しい知が入れなくなってしまうからなのだとのこと。
ルーティン化するとこうことは、組織の中の「知」を、まるでコンピューターのデータを圧縮したり、アーカイブしたりすることなのか。

では、ルーティンによってどこに組織の認知が(圧縮されて)貯めこまれるのかというと、組織の人々の無意識の領域で、つまりこれはSECIモデルの「暗黙知を共有する」ことなのだそうです。

こうして、ルーティン化することで組織は進化するための新たな認知を留める領域を増やそうとするのですが、一方でルーティンはその進化を止める危険性も孕んでいるとのこと。
どういうことかというと、ルーティンは「行動パターン」「仕事の仕方」を安定させ、組織の認知のキャパシティを高めます。が、一方でこの安定化が行き過ぎると、組織メンバーがすでに埋め込まれた内部ルーティンだけに依存するようになり、結果として、組織はサーチ活動を怠ったり、外から得た知を受け付けなる(イナーシア)、とうことが起こります。かくしてルーティンが硬直化し、ルーティンが組織の進化を止めてしまう、ということになります。

このルーティンの硬直化によって、進化を止めてしまっている組織が山のように存在しているのではないでしょうか。
組織は、行き過ぎた業務プロセスの平準化の推進が、それを行っている人々の思考停止(内部ルーティンへの依存)を招き、人々から新たな知の探索への意識を奪ってしまっている、ということに自覚的になることが必要なのだと思います。

次回は、第10回  2月11日(木) となります。
ご興味のある方は、ご参加ください(#^.^#)
途中からのご参加、大歓迎です!

第10回 2月11日(木) 
・「第17章 ダイナミック・ケイパビリティ理論」(P203、P300-314)
・第2部のサマリー:第2部の学び・気づきのふりかえりと分かち合い

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