【開催しました】「世界標準の経営理論」読書会14 第24章:エンベデッドネス理論/ 第25章:弱いつながりの強さ理論

第4部 社会学ディシプリンの経営理論に入りました。

社会学の目的の一つは、人・組織の社会的な関係性のメカニズムを解き明かすことですが、現代において多くの経営学者が、社会学の理論を産業、組織、企業、ビジネスの分析に次々と応用しています。その理由は、これからの時代は「人と人の社会的なつながり」が益々重要になるからです。

エンベデッドネス理論とは埋め込み理論とも呼ばれ、「ソーシャルネットワーク:社会的なつながり」とは何か、そこで人はどのように意思決定・行動するのか、ということを説明する基盤となる理論だそうです。

ビジネス上の人のつながり(Tie)は、大きく3つのレベルに分けられ、このつながりのメカニズムによって意思決定をし、行動してビジネスの営みを行っているということ。
アームス・レングスなつながり:初めてビジネス取引をするような浅い関係
ヒエラルキー上のつながり:企業内での制度的な上下の関係
埋め込まれたつながり:深く、それなりに強い関係(何度かビジネスを一緒に経験したり、場合によっては苦楽までも共にしてきたような)

これまで人々は、face to faceのリアルな関係性とつながりをつくってビジネスを行って来ましたが、近年はITの発達とSNSの登場によってインターネット上でのつながりが急激に拡大しています。しかしながらこの構造もリアルなつながりと本質は同じだというのです。

ただインターネットという物理的な制約が取り払われたつながりにおいては、国境を越えた人的なつながりのネットワーク(超国家コミュニティ)が埋め込まれたリアルな人のつながりを豊かにし、事業機会やリクルーティング、企業信用度情報の伝播がなされ、新たなビジネスが形成されています。
またこのことは、企業の「カタチ」の概念に「ネットワーク組織:企業を人のネットワークの集合体と捉える」という視点をもたらしました。

このネットワーク組織という視点は、私たちに「企業とは何か」という根本的な疑問と突きつけ、今後は企業の存在意義そのものが薄れていくのではないか、と結んでいます。

25章 「弱いつながりの強さ」理論(SWT)(マーク・グラノヴェッター(スタンフォード大学の社会学者)が提唱)は、人のつながりを理解するための「ブリッジ:2つの点と点をつなぐ唯一のルート」概念から、情報伝播において「弱いつながり」がどれだけ効力を発揮するのか、ということが説明されています。

この章を読むことで、SNS上において驚異的なスピードで情報が伝播、拡散される仕組みと理由を明快に紐解くことができます。

そして、イノベーションの創発にはいかに「辺境」の情報を引き寄せることが重要なのか、ということが述べられており、その媒体を「チャラ男とチャラ娘」というメタファーを使い、「チャラ男やチャラ娘の存在が、辺境の地からイノベーションに必要な情報を伝播することで新たな知と知が出逢って、イノベーションが創発されるのだ」と結んでいます。

私にとってこの「知を運ぶ媒体による新たな知と知の出逢い」というのは、組織開発のメソッド、ワールド・カフェの「他花受粉」や、OST(オープン・スペース・テクノロジー)の「バンブル・ビー」を想起させ、今更ながら改めて、「他花受粉」や「バンブル・ビー」にはそういう理論的な裏付けがあったのか、と理解を深めた次第です。

この2つの章の理論を読んで思うのは、これからの時代(既にもう、と言えるw)、「企業」という枠組みの中に人々と閉じ込めて事業を為すというのは、もはや「ナンセンス」な考え方になるのだ、ということでした。

しかしながら、未だに多くの中朝企業経営者の世界観においては、「いかにして「企業」という枠組みの組織を拡大するか」、そしてその「企業」の拡大こそが「企業」の成長の形であり、発展の姿である、というのが主流を占めている(信じて疑っていない)というのが現実です。

いやいや、これからの組織のカタチは確実に変化して行きます。
この現実と向き合い、いち早く時代の変化に合わせて柔軟に変化した組織が、成長し、発展して、未来の社会を形成するメインプレイヤーになって行くのは間違いないでしょう。

そういえば、「企業」というのは「人」を「止」める「業」と書きますね。

次回は
第15回 3月18日(木) 申し込む
・「第26章 ストラクチャる・ホール理論」(P435、P479-498)
・「第27章 ソーシャルキャピタル理論」(P436、P499-517)

です。
ご興味のある方は、ご参加ください。

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